芯柱 2023 👈
brass, wood
芯柱 2023 👈
brass, wood
芯 柱
し ん ち ゅ う
芯柱
素材:真鍮、木材
サイズ:W450xD450xH1570
「芯」人間の心や精神、意思
「柱」真っ直ぐに立てて支えるもの
人という存在は、
日々の出来事や感情の重なり合いで構成されていくものだと思う。
様々な経験、選択、出会い、感情、感覚…
瞬間の積み重ねはそれぞれの独自の役割を果たしながら
人を成している。
時に自分が小さく見えても
毎日同じ日常を繰り返しているように感じても
全く同じ日はなく、小さな自分一つ一つは、重なり合って大きくなっていく。
そしてその柱は
人という存在を支えていくのである。
コンセプトを決めるまで
今年は今までの自分を振り返る時期となったと思う。小中高を過ごし、大学に入り、就職をやり遂げ、社会人になることが決まった。しかしそれから次のステップがわからなく、とても不安定な状態になり、「ずっと頑張ってはいたけれど、何かすごい人になれた気もしないし、結局何も意味もない日常を特別なことは何もしないで過ごしていただけだったのではないだろうか」、「私は何のためにここにいて何のために生きているのだろう」など、ネガティブな考えに囚われていた。その中で、多くの人が私と同じ悩みを抱えて生きていることがわかった。様々な人と話しながら考え続けた結果、何か大きなことをするだけに意味があるのではなく、生きていくだけで経験や記憶を積み重ねていき、それが私を支えてくれたおかげでここまで来ることができたという結論にたどり着いた。そしてそんな自分を象徴する、自分と同じ157cmの作品を作りたいと思った。そして世の中の様々な「自分」たちにも自分の人生を振り返り、自分が積み重ねたものの膨大さに気づいて欲しいという思いを込めて制作した。
制作をしながら
本作品は主に旋盤とスピニング(ヘラ絞り)という機械を使用し、パーツ一つ一つを作り出すことがメインの制作だった。地金となる真鍮を切り出し、求める形になるまで削ったり絞ったりして形を作っていく、形ができたら磨いて、できたパーツに穴を開け、ネジ棒にパーツやナットを回しながら組み立てる作業を行った。
この全ての工程の共通点は機械や部品を「回転」させながら制作していたことである。作業は慣れない機械を回し続ける単純作業の繰り返しだった。また、パーツを細かく計画して作るよりは即興でその時のイメージで作ることが多かった。そのため全体のイメージが想像しづらく不安な気持ちを抱えたまま制作を進めていた。
私はこの制作工程が、私が作品で表現しようとしていた人の存在や、生きるということに一致するところが多いと感じた。回転する作業の繰り返しは「日常の繰り返し」、即興での制作は「偶然と瞬間の選択の積み重ね」、そのような制作から来る不安は「見えない未来への不安」に似ていると感じた。全てのパーツが揃い、組み立てが終わった時には私が思っている「人の存在」のように、パーツ一つ一つそれぞれの独自の魅力が見え、調和のある作品になっていた。制作を通じ、私は作品の意味をさらに考えながら、作品のコンセプトと伝えたいことを感じながら制作に取り組むことができたと考える。
①旋盤
【作業工程】
真鍮棒を旋盤に固定する
ドリルで穴を開ける
ネジ穴を削る
形を作る
切断する
磨く
31個のパーツをネジ棒に入れて組み合わせる
②ヘラ絞り(スピニング)
真鍮板を丸く切る
スピニング機械に木型と板を固定する
回転させる
形を作る
磨く
ドリルで穴を開ける
6個のパーツをネジ棒に入れてナットを留めて組み合わせる
③展示台(スピニング)
木の板を丸く切る
36個のパーツを5分割して接着する
ドリルで穴を開ける
ネジ穴を削る
スピニング機械に固定する
回転させる
ヘラで削って滑らかにする
組み合わせる